狭山天下茶屋

自由な色で描いてみよう

100題

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2009.11.25.Wed

006

お題配布元
005.着信音

006.汚れないモノ

 私は汚れている。
 それはもう、身も心も。余すところなく。

 しかし、私は自分を汚れた人間だとは思っていない。
 私は汚れない。汚そうとしても、汚すことなどできない。
 神話や陰陽道によれば、人間は汚れから生まれてくると言う。子を宿すには、汚れなければいけない。
 私は汚れたくても汚れられない。いつまでもきれいなままだ。動物本来の役割を放棄し、歓喜と享楽のるつぼと化した私の揺籠は、男女の愛の結晶を育むことができないのだ。
 そんな事実を突きつけられたのは、高校生の頃であった。

 当時、私は松山の進学校に通っていた。成績優秀・文武両道・容姿端麗と、まるで絵に描いたような優等生像をひっさげて学校を闊歩していた。すれ違った男子生徒は振り向き、女子生徒は羨望と嫉妬の視線を投げつけ、教員は明らかに手を抜いた。皆が皆私に憧れていた。佐伯(さえき)柚香は、学校のアイドルだった。
 三日に一回は愛を囁かれた。もちろん男子生徒だけではない。教師と生徒の一線を越えようとする者もあった。今となれば、どうしてそういう連中の手綱を握っておかなかったのだろうかと後悔する限りではあるが。当時の私はそれだけ純粋だったのである。
 私は、清く正しい男女交際に憧れていた。生徒手帳で禁止された「不純異性交遊」に手を染めようなどと思ったことすらなかった。
 ウブな乙女だったのである。今では考えられないが。
 乙女にとって何よりも重要なのは、己の操を守り通す事。それは鉄の掟であり、守らなければならない誓い。将来、自分の隣に居る人に全てを捧げ、二人の愛を形にできればいいと夢見ていた。子供は三人欲しかった。

 そう、過去形。
 私にとっては、何もかもが過去形。
 
 その現実を突きつけられた時、私は壊れた。眉目秀麗な学園のアイドルとしての地位も、優等生としての誇りも、今までに守り通してきた誓いも、何もかも意味をなさないものとなり果てた。
 純情を塗り固めたような恋心で、運命の男性と大恋愛の末に結ばれたかった。夫と三人の子供に囲まれて、幸せに暮らすことを夢見ていた。そのためなら、恋の苦しみも、破瓜の痛みも耐えられるはずだった。
 途方に暮れ、自暴自棄になった。
 死のうと思った。
 死刑宣告を聞いてから街中を当て所なく彷徨った。恐らく、幽鬼のような表情で市内を動き回っていただろう。そこで私の記憶は途切れている。気がついた時には路上に倒れていた。地面に転々と広がる血潮を見て、自分が犯された事に気がついた。引き裂かれた制服のブレザーを抱えて、静かに泣いた。
 最後まで握りしめていた貞操まで失い、私はすべてを失った。
 アンナが見つけてくれるまで、私は路地裏で泣いていた。
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2009.11.18.Wed

005

お題配布元
004.破壊

005.着信音

 玄関先に放り出した携帯電話を拾い、アドレス帳を片っ端から探す。
 アテはいくらでもある。夜の繋がりを中心に、電話を掛けていけば小娘に辿り着くことは容易いのだ。

 小娘、ソフィアは『足コキ姫』と呼ばれていた。この狭苦しい松山の歓楽街で、彼女の噂は絶えることを知らない。一番町から三番町まで存在する松山歓楽街において、一番町ではホットパンツと黒スト姿で歩いている姿を目撃された。その数時間後、今度は二番町ではチェックのプリーツスカート、三番町ではレギンスという出で立ちでの目撃例がある。それも全て同じ日のうちであった。これが何を意味しているかなど、明らかな事だ。
 柚香自身も危惧していた。小娘に亭主を奪われてからというもの、パトロン達が次々と姿を消しているのである。姿を消すと言っても、蒸発する訳ではない。家を見に行けば確かにそこに居るのだ。しかし、彼らはもう柚香を相手にしようとはしなかった。譫言のように「踏んでくれ」と連呼し、聞く耳を持たない。
 骨抜きにされてしまったのだ。あの忌々しい小娘に。

 あ行。相葉、青木、赤坂と続くアドレス帳に、アンナというカタカナがある。アンナは二番町の主と呼ばれる古株であり、柚香の良き相談相手であった。
 柚香がまだ高校生だった頃、清く正しい援助交際に文句を付け、頭にヤの付く自由業の方が大挙して押しかけてきた。家にも学校にも居られなくなった柚香は、家々を点々とした後アンナの店に匿われた。そこも嗅ぎつけてきたヤの組の若頭とお付きのご一行を恫喝一つで怯ませ、「奥歯ガタガタ言わせちゃる」の一言で若頭の尿道を崩壊させた。悲しい事に、あの組は次の代には潰える。
 アンナに電話を掛ける。長い髪を振り払いながら、携帯を耳に近づけた。コール音の後、店じまい中であろうアンナの疲れた声が聞こえてきた。

『はいアンナハートです本日の営業は終了いたしました』
「あたしだけど」
『あーら、ユズじゃない! 元気してたのー?』

 アンナの野太い声が電話口から聞こえる。柚香が黒髪を伸ばそうと決意したのは、このアンナの姿を見てからだった。幼い日に見た父のように大きい背中、角張った顔、厚い胸板、浮いている厚化粧。まだ若かった柚香の脳裏に、アンナの姿はしっかりと焼き付いている。
 アンナはゲイバーの店主だった。
 『ヤ食いのアンナ』として畏れられている彼女は、来店してきた自由業の方達を文字通りにハメ殺し、彼女の体ナシでは生きられないようにしてしまう。私を襲おうとした若頭の組が潰えるのは、彼がもう男しか――さらに言うならアンナしか――愛せなくなってしまったためである。

「人を探して欲しいんだけど」
『あー、あの娘ね』
「そ。あの淫乱ロリビッチ!」

 ビッチの発音に自然と力がこもる。

『任せときなさぁい。うっふ』

 柚香は身震いした。アンナと話したときに起こる生理現象であった。
2009.11.13.Fri

004

お題配布元
003.緩やかな痛み

004.破壊

 お狸さまの前で泣いていました。
 若いカップルが心配して寄ってきましたが、返事もせずにその場を走り去りました。
 彼氏を奪われた悲しみよりも、恥ずかしさや悔しさがこみ上げてきます。彼氏に対する怒りが吹きだし、涙が頬を伝います。自分が喜怒哀楽のどの状態にあるのか、そんな事さえ分かりませんでした。頭にあるのはあのシーンと、黒髪の美女だけだったのです。

 恐らくお狸さまの前であんな体験をしていなければ、私がこの趣味に目覚めることも無かったのでしょう。彼氏を失った事は少し口惜しいのですが、柚香さまには感謝しております。

 その夜、私は壊れました。いえ、素直になったと言うべきでしょうか。
 それからは、歓楽街・松山市二番町界隈にソフィアありと言わしめる程の右へ左への大立ち回りを演じました。男達を――正確には男達の息子を――文字通りに踏みつけ、時に素足で時に黒ソックスでこすりつけながら、次々と快楽と羞恥のぬかるみに叩き落としていったのです。私が使うのは足だけですから、未だに貞操を美徳としております。それに、土踏まずは妊娠しませんので。
 神に戴いた貧相な体のためか、女児に劣情を催す犯罪者予備軍の方々が主なお客様でした。彼らってば、本当にいい声で"鳴く"のでついついサービスで言葉責めもしちゃうのです。私の日本語は片言ですが、「だがそれがいい!」と皆さん温かく迎え入れてくれました。周りの視線が冷たいことへの反動なのでしょう。

 ある日、面白いお客様が見えました。私を見るなり抱きついてきたのですが、その方は女性だったのです。同性愛者で小児性愛者で救いようのないマゾヒストというアブノーマルを煮詰めたような彼女は、私を突き放すなりこう言いました。
「あたしを虐めてください」
 私の中で何かが弾けた瞬間でした。両手両足を考えられる限りに動かします。何度も絶頂を迎える彼女を見て私は悟りました。悟ってしまいました。私は女もいけるクチだったんだと、悟ってしまいました。
 そこからは話が早かったです。どんな男女から交際を申し込まれても固辞し、ただ一人の女性だけを追い求めました。もっとも、彼女への恨みが徐々に変質的な愛へとその姿を変えていったのでしょうけれど。

 私は、柚香さまが苦悶に喘ぐ姿が見たいのです。
 綺麗で長い黒髪も、均整のとれた顔立ちも、豊満なわがままおっぱいも、締まりのない下半身も、男を路傍の石か何かだと思っているその心も全て、苦痛と快楽に溺れさせてあげたいのです。
 私の一挙手一投足で。

 柚香さま、お慕い申し上げております。




4題で1話分くらいにまとめていこうかしらね。
柚香,柚香,ソフィア,ソフィアくらいのパート割になりそう。
2009.11.12.Thu

003

お題配布元
002.約束

003.緩やかな痛み

 痛みを感じます。どうしてでしょう。
 愛しのあの方は、結局何も言っては来ませんでした。私だって、こんな躾のなっていない駄犬なんて要らないのです。玄関開けたら二秒で駄犬など在っても無くても同じの昼行灯ですもの。こんな変態、あの方とのコネクションにならないのならホップ・ステップ屠殺です。
 あまりにもお返事が無いので駄犬を返納しようと思い立ちましたが、せっかくこちら側から譲歩して差し上げたのに好意に耳を貸さない始末。
 どうすれば分かってくださるのですか、我が愛しの柚香さま。

 私とあなたの馴れ初めは、しんしん雪が降るクリスマスイブでした。
 日本で出来た彼氏とデートして、ディナーして、ホテルでして、のジャパニーズ・クリスマス・スタイル――彼氏はそう言っていました――の予定でした。いささか疑問には感じましたが、郷に入らば郷に従えです。
 緊張のあまり待ち合わせ場所に一時間も早く着いてしまった私は、彼氏を驚かせてやろうと物陰に隠れていました。降りしきる雪の中、お狸さまの石像の裏にしがみついている外国人という絵はなかなかに浮いていたと思います。いつもは大人びた服装を好む私ですが、このときは背格好相応に見られる服装をしていました。ダッフルコートにスカートを合わせ、マフラーとニット帽で扮装した姿は、どこからどう見ても女子高生そのものです。見る人によってはもっと幼く感じたかもしれません。

 そうそう、私のような幼児体型の人に多いのですが、その容姿をコンプレックスとしてる方が大勢いらっしゃいます。なんと勿体ないことでしょう。斯くの如き神から与えられしものを利用せずに引っ込めてしまうなんて。そういう輩を見ると、引っ込むのは胸だけにしなさいと小言の一つでもくれてやろうかと思うのです。
 私は、この体を満喫している人間です。ロリじゃ勃たないという男を見つけては、足蹴にして煽情して言葉で嬲って発射させます。快楽と羞恥の狭間を揺れ動き、苦悶の表情を浮かべるあの顔。
 うふふ。思い出しただけで涎が出てきてしまいますわ。

 ああ、馴れ初めの話でしたね。
 彼氏は二十分前には着いていました。プレゼントらしき箱を持って。
 胸が高鳴ります。まるで頭に血が上ってくるような火照りです。故郷のバンドが打ち鳴らす16ビートに匹敵するような鼓動。指先足先にまで血潮がうねり、まるで燃えるるつぼの中に放り込まれたようでした。
 そこへ現れたのが、長身の女性でした。その時見た顔はしっかりと覚えています。
 彼女は二言三言話すと、彼氏とどこかへ行ってしまったのです。プレゼントを投げ捨て、私の編んだマフラーを放り投げ。
 何が起こったのか、私には全く分かりませんでした。呼ぼうにも声が出ません。手を振ろうにも手が上がりません。追いかけようにも足が竦みます。やっとの思いでマフラーとプレゼントを拾い上げた時には、二人はホテルへ消えていました。涙が出ました。止まりませんでした。道の真ん中で、お狸様の石像前で泣きました。
 私は、彼氏を寝取られたのです。よりにもよって性夜に!


 続く。
2009.11.11.Wed

002

お題配布元
001.災いの子

002.約束

 断食四日は断固として阻止したい。
 そう思った柚香は、箪笥から適当に引っ張り出した服に袖を通した。裸族の嗜みがそうさせるのか、衣服の肌触りが妙にむず痒い。

 チュニックとジーンズというラフな服装ながら、姿見に映る柚香はそれを着こなせるだけの容姿を兼ね備えている。
 つまるところ、柚香は世間一般に美人と称される部類の人間であった。常に男を絶やさなかった彼女にとって、男などは無限に代替の効く些末な塵芥に過ぎないのである。
 件の『敵対的買収』は、そんな彼女の自尊心に犬の小便を引っかけた。飼い犬に手を噛まれるならまだしも、愛犬を奪われ足蹴にされた飼い主の話はなかなか耳にすることはない。自由恋愛を標榜し、腹上世界一周せんとワールドワイドな夜間騎乗に勤しんだ柚香にとって、自分の飼い犬――もしくは種馬――を奪われる事など屈辱を超えた陵辱だ。

 鏡には、焦点の定まらない女が居た。沸々と湧き上がる怒りと、北欧小娘に負けた悔しさが顔面に満ちあふれている。
 八頭身のモデル体型。てらてらと淫靡に耀く黒髪は絹のように流れた長髪。均整のとれた顔は、世が世なら革命の引き金となり得る。たゆむ豊満な乳房はハリもよろしく重力に逆らい、綺麗な放物線軌道を描いている。控えめに細くくびれた腰――少し肉が余ってはいるが――から、自重を知らない安産型の軽い尻。数々の男をハメ堕としてきた愛器は、昔抱かれた神父から聖母マリアの再来と評される程である。それが褒め言葉なのかどうかはさておき。
 方や小顔だが低身長。波打つ金の癖毛は毛羽だったポニーテイル。顔こそ大人しい、美少女の鏡のようなマスコット的魅力を讃えてはいるがその実鞭が大好きな天才ドッグブリーダー。まな板の如き胸板は、母性など持ち合わせない幼気な少女を演じるため。くびれの浅い寸胴な脇腹は、性の対象になり得ない己を演出するため。小さくまとまった臀部は、発展途上の雰囲気を漂わせるため。揺籃の準備すら終えていないのではと思わせ、小児性愛者をその器で搾り取る。

 パーフェクト・セックスシンボルの柚香が、未発達児童に負ける。
 あってはならない事だった。

 柚香は決意した。自分と約束した。
 ソフィアを――あの北欧小娘を犬として飼い殺してやろうと。
 首輪を付けられ、尻尾を生やし、主人の帰りを待つ健気な犬。駆け寄ってきた所を土手っ腹に一発。うめく犬の股間を踏みつけ、踏みにじる。踏みにじる。これでもかと踏みにじる。鞭を取り出し、尻を染め上げる。赤く赤く。白塗りの皮膚から血がにじむまで。赤く赤く。痛い痛いと泣き叫ぶ犬に向けて、さらに打つ叩く殴る蹴る。お前は犬だ。雌犬だ。鳴くならワンだ。痛いじゃない。

 姿見の前で、女は顔を綻ばせた。
 あってはならない表情だった。

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